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レイ・テクニカという男 Part2

夕暮れ時の砂浜は見事なほどにコントラストを描いていた。

犬を散歩させる老夫婦、2人だけの世界に浸るカップル。

誰もが午後の静かな時間を過ごしていた。
だが、この男だけは違った。

「何もここでやらなくても・・・」

そんな冷ややかな声も気にせず、波打ち際でダンベルをこなしている。

これこそ、“24時間戦う男”、レイ・テクニカの真骨頂だ。

すさまじい集中力が、周囲を寄せ付けない空気を醸し出していた。


鉄人特訓再開を決断したのはこの日の午後のことだった。

「フェルサが特訓をよびかけてくれたのはうれしかった。あの言葉を聞いて、オレも行動に移すことを決心した。だけど、2人で特訓しなくても大丈夫だ」。

こう話したテクニカは福岡の道場で4時間の練習を終えた午後3時、一人でロードワークに出発したのだ。
フェルサはテクニカのオーバーワークを心配し、監視役として合同練習を申し出ていた。

むろん、忠告は届くことはなかった。
テクニカは機先を制するかのように、「今回はまじめな特訓だ。1月12日までは脱がない」と宣言。
テクニカの特訓シリーズは人前で裸になるのが恒例となっていた。裸には羞恥心に耐えて精神面を強化するという重要な要素があるが、 今回は着衣での特訓となった。
その間にも次第に日は落ちていく。

夕日をバックに気合のポーズ。

幻想的な風景だ。ここで終わればテクニカの言う「まじめな特訓」として終了していたが、鉄人がこの程度でサヤに納まるはずがない。
テンションが高くなると、やはりというべきかスニーカーを脱ぎ捨てた。

さらに両腕をまくり上げ、まるで何かに取り付かれたように海に飛び込んでしまったのだ。
この時、水温は2~3度。テクニカは一心不乱に掌底を海面に向けて繰り出し、驚いたカモメが一斉に飛び立った。
体中から生命力がみなぎる。

もちろん下半身は水につかっている。

はねる水滴で体全体もびしょ濡れだ。
体調悪化につながりかねない無謀な寒中特訓・・・。 

当の本人は笑顔でその意図を明かした。

 

「久々に海に来たら、海に(掌底を)打ちたくなってね。新技はひらめいたんだ。普通の掌底とは違うものができそうだな。カヴァレロがオレの新技開発を予想していたが、よく分かったな」
海に来たら泳ぎたくなる人は多いが、掌底をしたくなる人はおそらくテクニカひとりだろう。

これぞまさしくテクニカワールド。

とにかく、はた目に理解不能だった
この行動は新技の試し斬りだったようだ。まだ完全形ではないため命名はしてないが、振り下ろすような形になりそうだ。
寒中特訓は2時間も続いたが、すっかり熱くなってしまった小橋はもう止まらない。

付近の工事現場を見つけると「立ち入り禁止」の看板に目をくれることなく進入。

そして、なぜかフォークリフトに興味を示した。
さっそくロープを自分の右腕と車体にくくり付けた。

突然の侵入者を聞きつけた現場責任者も慌てて駆けつけてきたが、数秒、テクニカの動きが早かった。「ウオッー」と声にならない雄たけびを上げて
豪腕を振り下ろすと、30トンもある重機が数十センチ、確かに動いた。
「あれが動けば、30トンクロスチョップが完成するかなと思ってね。さすがに重かったな」

周囲の反応をまるで気にしない堂々とした態度には、注意に来たはずの責任者はただ口をポカンと飽けるばかり。
しまいには「頑張ってください」と責任者からエールまで送られ、テクニカはようやく工事現場を後にした。
この日、午前と午後で練習に費やした時間は7時間にも達した。

「今回は寒中特訓になったな。
冷たかったけど気合が入ったよ」。

完全無欠の鉄人は2021年も元気だ。