HPW プリンセスロード 君にも見えるリングの星
「あーーーっと!!!4期生軍!3連敗!!これで5期生の勝利が決まってしまったーーー!!」
拝啓
お母様
切羽詰まってます。
5期生"四天王"による4期生への挑戦状。
HPWによる興行の一環としてマッチが組まれていた…が
大久保、三浦、内藤ら3名は潔い程の惨敗。
3名とも10分以内にダウンしてしまった。
ただただ5期生の実力を示しただけの試合となっていた……
「ごめん…ユメ、負けちゃった…」
本日は本多 霧江により大久保 かすみが敗北。
4期生の中でも実力者である彼女が敗北した事により、4期生推しのファンたちは絶望に打ちひしがれていた。
そして次の興行にて夢香の相手を務めるのは四天王筆頭 酒井 エリ。
その事実にバックステージのモニター越しに1番焦ってるのは当然、夢香本人である。
「…おい、…おい!聞こえるかい?」
「……はっ!気を失ってました!って涼さん!?」
冴島 涼
HPWのエースであり学園の創設に深く関わった絶対的な存在。
夢香は彼女に憧れているが、夢香だけでなくほとんどの生徒達は彼女を目標にしていたであろう。
「君が戦意喪失しているって聞いて三浦君に言われて来たんだが…」
「せ、戦意喪失…!?いえ、そんなことは!!!………あるかもしれません…」
「君らしくないね。負け試合でも笑ってるじゃないか」
「……かすみちゃん達があんな綺麗に負けるなんて…って思っちゃいました」
「ほう?しかし彼女らはご存知のように君より少し戦績がいいくらいで負けてる数は多いじゃないか」
「そうなんですけど…」
「後輩に負けるなんて。って思ったのかい?」
「!!!!うーん…そうかも…しれません…」
「ははは、失礼な子だな」
「すいません!!エリちゃん達が強いなーとは前々から思っていたんですけど、心の底では私達が本気を出せば…とか思ってたのかもしれません…」
「……まあ、後輩が先輩を上回るだなんて日常的な物だからね。
正直、私は卒業生達の四天王だとか10傑だとか外野が決めたよく分からない括りで纏まってしまってる事は良くないと思っていたんだ。
酒井君はそれを打破してくれると期待していた。そして、青山 夢香。君にもだ。」
「え!?私にですか?」
「ああ、君は私に堂々と"あなたを倒す"と宣言してきた子だぞ?」
「あ、いや、いつか戦ってみたいなーって気持ちが……それに倒すとは…」
夢香は入学時の自己紹介にて夢は冴島 涼とリングで戦う事と宣言したのだ。
「初めから負けると決めて戦う気でいたのか?それなら今からでも戦うかい?」
「い、いや!そんな………」
「あの時の目は勝つ気でいる。そう私は思ったよ」
「……正直な話、入学する前は何度も涼さんだけじゃなく、色んな選手に勝つ想像をしてたりしました…でも、さやかちゃんやかすみちゃん。それに先輩達を見てたら…ちょっと自信を無くしました」
「まあそうだろうね。そんな君に物申したい子がいるようだ。いいよ、入っておいで」
扉を開けて入ってきたのは…
「さやかちゃん…」
龍造寺 さやか
夢香と同期であり、卒業から現在に至るまで連勝中の"天才"である。
「やれやれ!君は卒業試験で自分に勝ったんだぞ!もっと誇りをもってよ!」
そう、夢香はこの天才相手に45分にも及ぶ激闘の末、フィッシャーマンズスープレックスにて勝利した過去を持つ。
「そうだけど…」
「けど何さ!それに、負けても引退するわけじゃないだろ!?もっと堂々として学生の時みたいにぶつかっていきなよ!!」
「そうだぞ、君は夢を諦めるつもりかい?」
「さやかちゃん…涼さん…」
「負けたら仇はとってやるからさ、頑張れ!」
「…ありがとう、私、頑張ってみる!今更黒星が1個増えたからって何!4期生の意地を見せてやります!!!」
「ヨッ!大将!じゃ、元気も出てきた所で自分は戻るね!」
「さやかちゃん、ありがとう!」
「いえいえどうも〜〜」
部屋を出る龍造寺。
廊下を歩いていると酒井ら5期生と出くわす。
「あらあら、龍造寺先輩!見ていただけましたか?今日に至るまでの私達の戦い」
最初に切り出したのは酒井 エリだ。
「うーん、ごめん、よく見てないかな。基本同期の試合しか見ないし、対抗戦はすぐ試合が終わってたからなあ」
嘘である。この龍造寺 さやかは同期の試合も見ていない。
興行中はトレーニングをしているし、放映を録画こそしているが冴島 涼の試合以外全て飛ばしてみている。
「それでも結構です。私達の実力は分かったでしょう?」
「サボり癖のある奴らに快勝してもなあ、よくわかんないや」
「私達としてはあんな連中の相手をするのではなく、貴女と戦いたいのですが」
「まあ、そもそも自分より前に夢香には勝てないと思うけど」
「……どういうことですか?」
酒井の笑顔が崩れ、じっと龍造寺を睨む。
「どういうことも、少なくとも君じゃ夢香に勝てないだろうねー」
「おやおや、さっきまで負けても当然という意見でらっしゃったじゃないですか」
「夢香は別だよ、自分に勝ったし、トレーニングも真面目にしてるしね」
「やっぱあの噂は本当だったんだ……」
思わず声が出た榊原 優子。
「え?でもよう、あの先輩、負け続きじゃねえか」
男勝りな口調でそう申し上げるは井伊 やよい。
「まぐれでしょう?流石に連敗続きのあの人が貴女より上とは思えません」
「どうだろうね〜今はそりゃ自分の方が強いと思うけど……夢香は勝つ気まんまんだと思うよ?さっきその夢香と君たち後輩が調子乗ってるって話をしてきたしー」
「………へえ、あの人って、意外とそんな感じなんですか…それはそれは楽しみですね」
「でしょう?ま、次の試合は自分ちゃんと見とくから!ないとは思うけど夢香が負けたら勝負さー!」
「ええ、すぐにでも証明してみましょう。私たちの強さを…!」
「頑張りたまえー!はっはっはー!」
龍造寺の嘘により火がついた酒井!
彼女と夢香の試合はGGAとの合同興業に持ち越された!
一方の夢香は…
「わー!このお肉おいしいー!」
「負けた腹いせにいつもと違う焼肉屋ってのもいいねー!」
またしても同期と焼肉屋に行っていた!!
次回
夢を継ぐもの