GGA チャンピオンズロード "アンサンブル"
「マクレガー!!またしても勝ちました!もはや王座に迫るような勢いです!」
「ヤンもまさか自分が悪夢を見せられるとは思わなかっただろうな」
「いやしかし、私はこの試合で彼がサブミッションを使わなかったのが気になりますね」
「言われてみればそうだな。得意のジュードー・ワザが使われなかった」
そうだ、そうなんだ。
「パワーでガシガシやってたな。マクレガーには押し切るしかないと思ったのか?」
「そう思うと納得できますね!」
いや、できねえよ。
こいつはまだ俺に手の内を隠そうとしている。
俺はリングに横たわるヤンを後にし、退場した。
「お疲れ!パワフルなファイトだったな!」
試合に勝てて上機嫌なアンジェロが話しかけてきた。
「ああ、確かにパワフルだったが…」
「ジュウドー技の事か?確かに違和感はある試合だったが…あえて使わない意味も分からないだろ」
「俺には手の内を隠してるようにしか思えねえ」
「考えすぎだって」
「手っ取り早く試合を終わらせたかったからだヨ」
話しているうちに当の本人が現れた。
あんだけ叩きつけたのにピンピンしてやがる…!
「君の力は開始五分で推し量れタ。だからあとは盛り下がらない為に勢いがあるように試合を見せるだけでしタ」
「へぇ…随分とでけぇ口の負け惜しみだな」
「負けたのは事実だヨ、今回はネ」
「で、話したいことってなんだよ」
「…そうだネ……まず、今のワタシは政府と関係がない。これが前提ダ」
「政府の諜報機関出ってのはマジだってことが」
「そうだヨ、そしてワタシはその機関に居た際にこの団体の秘密を手に入れタ」
「秘密…?」
「この団体…船の運用資金、レスラーへの投資、設備…莫大な資金の出処ダ」
言われてみれば贅沢だよな。保釈金まで用意してスカウトだなんてするし
「それはあるレスラー達が残した遺産ダ」
「遺産…?」
「かつてヨーロッパで活動していたレスラー達がいてネ…その男達は、中世末に集められた黄金の隠し場所を知っていた。
一説にはリーダー格がその黄金を集めた男の末裔とも言われている。
男たちはその隠し場所を開く鍵をチャンピオンズベルトとして作った。
その黄金を託すに相応しい強者が現れることを願って……
なぜ、この団体にそれの権利が委ねられてるかまでは不明だが、そのベルトがこの団体で争っているベルトだヨ」
「まてまてまて、話がデカくて追いついてねえ。ゴーストはその金塊が目当てって事か?」
「そうだネ。その通りだヨ」
「なるほどね。しかし、団体の貯金を引き出す鍵をレスラーに委ねてたのかよ…とんでもねえな」
「下手にガードマンを雇うより安全だロ?」
「そう言われちゃあ納得だがよ……ケネディとかはこのことを知ってるのか?」
「イヤ、恐らくは知らないだろうネ」
「俺に話をした理由は?」
「……ワタシはある男にこの金塊の目的を託されたからダ」
「目的?団体が使うためじゃないのかよ?」
「言っただろウ、"相応しい強者が現れたら"と」
「そのヨーロッパのレスラー達に託されたって事か?」
「その通り。ワタシはその約束を果たす為、そして何故この団体が隠し場所と鍵を握ってるのかを知る為にこの団体へ入っタ」
「よりによって何でゴーストに教えたんだよ」
「ゴーストはワタシが教える前から知っていタ」
「じゃあアイツのは自力で突き止めたってことか?」
「イヤ、それが恐らく政府だろうネ。勿論ワタシはさっきの事を政府に報告したからネ」
半分正解ってそういう事かよ
「でもよ、こんだけ使ってんだから大して残ってねえんじゃないのか?」
「計算だと8分の1くらいしか使ってないだろうネ。"彼ら"は全く使ってなかったからまだまだ沢山あるヨ」
「へえ……まあ俺は金なんてあってもな。とは思うけどな」
「これは意外な返答だったネ、飛びつく類だと思ってたガ」
「俺は戦えればそれでいいよ」
「クックック…いいネ、その餓えた心。…ワタシが君に話したのは君は強者の資格になる…と判断したからダ」
「それは光栄だ」
「ケネディ、ドラゴン…そして君とニーズヘッグ。今のところワタシが判定した資格者たる存在は以上だと思ウ」
「ケネディには近づかないのか?」
「とんでもない!彼の握ってるリストにはワタシの名前もあるようだからネ。近づけないヨ」
ヤンも入っている…?犯罪者のリストじゃねえのか…?
「そして、あと2ヶ月ほどでこの島は隠し場所へ停泊する」
「ゴーストを捕まるにはその時って事か」
「そうダ、ワタシはアイツやこの船の動向を知るためにアイツに近づいタ。私利私欲の為にあの金を渡すわけには行かなイ…ではまた連絡しようヨ、そろそろゴーストとの待ち合わせなのでネ」
ヤンは俺に連絡先を書いた紙を渡して去っていった。
ふと見回すと、先程から黙っていたアンジェロが頭を抑えて座っている
「大丈夫か?ダメージがぶり返したのか?」
「いや……アイツの声を聞いてると頭痛が酷くてな……」
「生理的に嫌な声かよ」
「……どこかで聞いた事があるんだ…あの声…」
「やっほーー!メディチ様復活ー!フェルナンドの野郎、強くなってやがったな!驚いたぜ!」
入れ替わりで空気を割るようにメディチの奴が現れた。
「ヤンとの話はどうだったんだよ!聞かせてくれよ!」
「あとでな、おれは今から寝るわ」
「エー!!楽しみにしてたんだぜ!」
「すまない、メディチ。黙っててくれないか?」
「アンジェロまで!!!ちくしょー!!」
メディチは慌ただしく走って部屋を出ていった。
「あ、メディチ…」
「ほっとけ、どうせ女と遊ぶか酒でも飲んでくるだろうよ」
ヤン…どこからが本当の話か分からないが、黄金が掛かってるとしたら各陣営の必死さが分かるな……
俺は、どうすべきなんだろうか………
そう考えてるうちに俺は眠りへとついた。
メディチからの女と遊んでる写真を添えられたメッセージを着信するまでは