GGA チャンピオンズロード "マネー"
俺は勝った。
試合中、俺はアイツへ"交渉"を持ちかけた。
それもあってかアイツの攻め手は従来より大人しかったであろう。
……まあ俺はいつも通り戦ったわけだが。
試合後、俺はアイツを呼び出し話を聞く。
「メディチさんは無事ですね!」
控室につくなり開口一番に聞きたいことを答えてくれた。
「どうして分かる?」
「オレはゴーストさんの依頼でメディチさんを妨害するように頼まれた!しかし……マイカの旦那にそのメディチさんを保護するようにも頼まれていた!んんん〜つまり!ニーズヘッグさんとアダムさんと別れた後に、オレは戻ってメディチさんの治療に務めた!」
「二重で依頼を受けていたのか、なるほど…だがどうしてそのように?」
「そっから先はワテが話すわ」
このわかりやすい訛りは…奴だ。
なんとアンジェロと共に俺達の前に現れた。
「こいつがどうしてもマクレガーと話をしたいだとよ」
「ワテはマクレガーの味方や。それを分かって欲しかったんや」
「どういう事だよ」
「ゴーストはそろそろあんさん方の事が邪魔になってきたみたいや。なんでかっつうと黄金のありかへ辿り着く日がそろそろ近い…なのであんさん方の妨害をしておこうとアイツは考えたわけや」
「お前の手下だから襲撃されただけじゃねえのか?」
「んまあ、それもあるんやけど、メディチはワテが頼むまでもなく黄金の在処を独自で調べてたんや。あんさんも分かるやろ?アイツが調べたがりなの」
確かに、黄金の存在を知ったらそれを探しそうな奴ではある。
「そんでなあ、ワテはこのユ・ムンを雇ってメディチの護衛を頼んでたわけや」
「しかし!相手はニーズヘッグ等強豪レスラー!オレ1人で勝てる訳がないのでぇぇぇ…アフターフォローに務めることにした」
「そういうこっちゃ」
「無事とはいうがなんでアイツは姿を見せないんだ?」
「アイツは黄金のある島に待機しとる。あそこは圏外や。公衆電話もないし連絡はとれへん」
「なんだよ……」
無事なら良かった。が行く前に話くらいしろよ。とは思った
「まあ、アイツを恨まんとってや。黄金の話はアイツからマクレガーはんにしない方がいいと話をしたのはワテや」
「なんだと?」
「アイツはあんさんへ友情を感じとるけんな。今までスパイであることを黙っとった事を今更言っても拗れるだけやろ」
確かにメディチ本人から話を聞いていたら俺もショックが大きかったかもしれない
「で、なんでお前は俺に"協力的"なんだ?」
「あんさんが面白そうやからよ」
「は?」
「ワテ、面白そうな男が好きなんよ。ファイトクラブであんさんを見た時から一目惚れしたわ」
「気持ちわりぃな」
「そんなん言わんといてやぁ!…詳しい意図は分からんが、ワテはこの団体が犯罪者達を集めとったんが気に食わんのや」
意外な言葉を口に出してきた。
理由は分からないがどうしてここまで訳ありのレスラーを抱えるのかは分からない
「釈放して恩を押し付けて…見世物のように戦わせよって…気に食わん……そこで黄金の話がきたわけや」
「それをもって抜け出そうって考えた訳か?」
「せやね。ただ、ワテはだんだん罪人を集めてた理由の方が気になってな…とりあえずゴーストの奴に黄金を握られないように動き始めたって訳や」
「…言っておくが、俺は戦うのが好きだから黄金も興味ねえし、抜け出す気なんてさらさらねえぞ」
「俺もだね。黄金なんかよりここでレスリングをしてた方が楽しいよ」
アンジェロが同調してくれた。グレゴリーやスワンプマンだってこの場にいたら同意してくれたであろう。
俺は目の前の敵と戦うだけだ。
「まあまあ、ワテとあんさんと戦ってみてあんさんの気持ちは痛い程わかったわ」
こんなことを言ってるが前回試合後に俺を襲撃したことは忘れない
「そんな睨まんといてや!」
「うるせえ、この間お前のやった事は忘れねえぞ」
「先週はほんの悪戯心や。強すぎてむかっ腹が立っただけや、許して」
そんなしょうもない理由で………しかし、俺は怒りを抑えて、本来の目的であるコイツに持ちかける"交渉"を行うことにした。
「はあ……まあいい、ちょうどマイカも居るし…マイカ、ユ・ムン。お前らに話がある」
「ほう」
「何だい!?」
俺はそれぞれに小切手を渡した。
「なんやこれ……300万!?」
「オレは20万だ!」
「お前らを俺が雇う。メディチの解放と俺への全面協力を求める」
これが俺の作戦だ。
金には金ってわけだ。
「おい、マクレガー…マジかよ!?」
「マーベラス!協力するのはいいがどうするつもりなんだい!?」
「…ケネディ、ゴースト…この2人からこの団体を護るんだよ」
「さっき言うたやろ、ワテは見世物になってるのが嫌って」
「ああ、だがここまでわざわざプロレス経験もない犯罪者を集めて何の利点がある?しかも犯罪者であることを主張すらしてない。ただ闘わせてるだけだ」
「せやかて…」
「俺は黄金はどうでもいい。ただ真実は知りたい。リストの意図も分からない。俺は見極めたいんだ、この船の存在価値を」
「そんなんのためにメディチの借金を肩代わりしようっていいなはるの?」
「ああ、こんな貯めても使わない金なんでくれてやるよ」
「おおきに、でも正直こんな金より黄金の方がメリットあるで」
「ゴーストを止めるという利害は一致しているとさっき分かった。ただお前らが黄金に目が眩んでいつ裏切るかわからないし、お前が言うように黄金に比べたら端金かもしれない。だが、そもそも黄金が確実にもちだせるかなんて分からないだろ?じゃあ確実に手に入るコレで手を打たないかって事だ」
「ふぅむ、まあオレはあればいいなくらいの認識なんでマクレガーの旦那に協力するのは全然いいよ」
「まあええわ、ワテもここに呼ばれた理由が気になるし……ええやろ、共にゴーストを止めよう」
「ありがとう」
俺とマイカは熱い握手を交わした。
まあ、金で作った関係なんだがな。
たまにはこういうのも悪くはない
「じゃあワテが知ってる情報を共有するわ。オセロット、ニーズヘッグ、アダム、ツインズ、ブラッド…コイツらがゴーストの協力者や」
オセロット…あの時は否定していたが結局ツインズとグルだったのか…
「ブラッド!?」
アンジェロが驚く。
例によって俺は知らない名前だ
「どうした、アンジェロ」
「いや…そんな事をしなさそうな奴だから驚いたんだ…」
「ブラッドはゴーストに弱みを握られているらしいで」
「その弱みが何なのかは分からないのか?」
「そこまでは分からんかったわ」
「そして、オレがアダムから聞いた所によると、織田 衞とかいう日本人レスラーも関わってるそうだZE」
「織田…?日本人か、ドラゴンなら知ってるかもしれねえな」
「決戦は2週間後や、アイツら側がどんだけの選手が試合に出てかつワテらもそれで立ち回りが決まる」
「ついでにドラゴンにお前らを使わないようにできるか聞いてみるよ」
「サンガツ」
さて、案外呆気なく話が決まったし、メディチも恐らく無事と確認できたので一安心だ。
あとはゴーストを現行犯で捕まえて突き出すだけだが……そもそも黄金は本当にあるのか?
2週間後。
この時の俺はまだこの出来事が序章であることを知らなかった。