GGA チャンピオンズロード "ラヴ"
時は第一次世界大戦まで遡る。
イタリアの兵士であったアーノルド・アウグストゥスは偵察に向かったアメリカ合衆国にてある女性と出会った。
シャルロット・フォッシュ
一目惚れだった。
その女性は彼が身分を隠して潜伏していた街に暮らしていた。
国に妻子がいた彼だったが、彼女の真紅の髪、鋭い眼差し、そして黄金の眼に魅了されてしまった。
そして、潜伏の為とはいえ、周囲に貢献的な彼の行動を見て彼女も彼に惹かれた。
彼女の積極的なアプローチは彼へ背徳心を与える暇すらなく結びつかせることになった。
ある日、彼は彼女から自分が信に値する人物であると改めて話された後に、彼女が所有している黄金について教えて貰う。
彼女の一族はドイツの高名な貴族の末裔であり、土地開拓の為にアメリカへと渡った。
そこで掘り当てた莫大な黄金で貧に苦しむ人々を支援していたのだ。
彼女は言った。
元々私の家の財宝でもないのでこれは有意義に使うべきである
と
そしてこの家業を継いで欲しいと頼まれた彼だったが悩んだ。
そう、彼がこのアメリカに潜伏した理由がこの黄金の情報を聞き付け、軍がそれを確保することだったのだ。
彼は家に帰り悩んだ。ここで冷静になれた彼はそもそも自分には妻子が居る。軍に逆らっても未来はないと判断。しかしこのまま彼女を放っておく事は出来ない。
彼は虚偽の報告を行った。
黄金はなかった
と
しかし、軍は甘くなかった。
そもそも潜伏役が現地の住民に解かされる現象は事例としてはよくある話であり、それを監視する兵士を隠して付けるのが定石だ。
異変を察知した監視役は彼女を拘束する為に動いた。
数名の兵士を連れて襲撃。
彼は軍の動きを察して彼女の命だけでも助けれるように動いた。
事態を察した彼女は、涙ながらに彼の手を振り払い、別れを告げて断崖から海へと飛び降りた。
彼は軍の仲間と合流。
所有者を殺害し、黄金を見つけ当てた。
これらの"功績"から虚偽の報告をした事については黙秘すると監視役から告げられた。
彼は激怒した。
愛に狂った彼はその場にいた兵士全てを殺害。
敵地とも言える場所に単独潜入を命じられた男だ。
圧倒的に優れた戦闘力を持たなければ成り立たない。
この男には勝てるはずがなかった
それが故に監視役も黙秘を提案したのだ。
しかし、愛は理屈ではなかった。
この激動で全てを失った。
いや、まだ、家族がいる。
しかし、この状況でどうするか。
このままでは帰れない
持ち主がいなくなった黄金をどうにかするしかない。
そもそも彼女は本当に死んだのか?
飛び降りたあとひたすらに海を眺めていたが死体が上がってきてるのを確認していない。
彼女を助けれるのでは?
そう思い、崖の方へと再び向かい彼は危険な崖を降り、下の方を確かめた。
どこかに打ったのなら血痕があるはずだがそれも無い。
水死体になっているならばどこかに浮いている。
しかし彼女は浮き上がってこなかった。
海岸に打ち上げられているのか?
海岸を探しても彼女は見当たらなかった。
彼はこう考えた。
自分が戦っている間に誰かに助けられたのでは
微かな希望に祈りながらも彼女を待つ事を選んだ。
ただ、彼女が意識を取り戻すまで待てば自分も危ない。
彼はその日の夜、トラックを使い黄金を全て持ち出した。
彼女が目を覚ましても問題ないように彼女と自分しか分からない黄金の場所に手紙を置いた。
彼はひたすらに、逃げるように旅をした。
街にはカモフラージュとして自分が殺した兵士の死体に自分のドックタグや血で塗りたくった軍服を起き、記録として「スパイである事がアメリカ軍にバレたので逃げる」事が記載されてる物を残した。
そうやって自分は死んだことにしていたが…遺体が無い違和感に気づかれるのも時間の問題だ。
そして、クリスティナに惹かれたとはいえ故郷の家族が心配である。
彼はいつか故郷に帰ることにしたのだが……
なお、この時の彼は狂っていた。
彼は自分の子孫がいつかあのクリスティナへとたどり着くことを信じてアメリカ、メキシコ、ブラジル、エジプト、トルコ、ウクライナ……故郷までの帰路、行く先々で女性を口説き、子を孕ませ、黄金の一部を渡して家族を捨てて行った。
そして6年近く大回りの旅で故郷であるイタリアへたどり着く事になるのだが、このまま入国する訳には行かないのでギリシャで整形手術を行い、顔を変えた。
パスポートも新しい顔で発行し、故郷へと戻った。
かつての家を確かめると家族が、あの時と変わらずそこにいた。
彼は不審に思われることを承知で家族と再会した。
家族は見知らぬ男に警戒するが、彼しか知らないような家族の情報や思い出を話し、面影がある事から信を得た。
家族にはクリスティナへの恋愛感情を伏せつつ、逃げる事になった事情を話した。
妻は黄金を持ち出した夫を強く非難した。
当然だ。この金が軍に狙われていない保証など何処にもない。
しかし、今のヨーロッパは大戦が終わり、様々な貴族が崩壊し1人の兵士の生死など気にする事象ではないことは確かだった。
それに今更返す訳にも行かないので選択肢としてはこれを消費する事しかなかった。
妻は
使うなら彼女の意志を継いで人を助けるべきだ。
と説いた。
一旦は警戒の為に、彼らはまずイタリアを出てイギリスへと移住した。
そしてまず、孤児院を作り上げた。
そして心身を鍛えるべく、レスリングジムを建てた。
様々な情報が飛び、規制される中で勉学に励むには厳しい時世であった為にこのジムは高い支持を得られた。
軌道に乗ってきた頃、1人で家を支えてきた労が祟り、妻は倒れ…2年の闘病を経て亡くなった。
彼女は死に際に手紙を残していた。
その中身は夫がクリスティナに恋をした事が分かっていたと書かれていた。
そして、ほとぼりも冷めてきた今、彼女へ返すべきであり、彼女を探しにいってもよいと書かれてもあった。
彼は妻に対し、強く懺悔した。
しかし、ここまで年数が経った状態でクリスティナを探すことは不可能でしかないと判断した。
探すのであれば自分の名前を有名にするしかない。
当時レスリングジムに行き場を失った若者やスポーツ選手、元軍人が多い事に目をつけた彼はショーとしてのレスリング…プロレスリングを商売とする事を決めた。
行き場のない腕自慢達がたどり着く理想郷
こうして作られた団体が
アヴァロンだった