GGA チャンピオンズロード "マイカ"
本日は非番なのでドラゴンの試合を見ていた。
空手ってのも相手にするのか面白そうだよな。喧嘩やってた時は胡散臭い拳法家はいたけど空手は見なかったな
等と思いながら酒を飲んでいるとある男の気配に気づいた。
「誰だ?」
「こっそり近寄ったのに気づかれてもた」
「てめえは確か……」
後ろを振り返るとさながら西部劇から抜け出してきたようなカウボーイが立っていた。
こいつはメディチが見せてきた男達に居たな。覚えてねえや。
「マイカっちゅう男やねん。よろしゅう頼む」
カウボーイの男は会釈をし、名乗った。
マイカ!スワンプマンが言ってた男か!
「訛りが酷いな。どこの出身だよ」
「南部の育ちやね。お手柔らかに」
南部でこんなに訛るのか…?
「なんで俺に近づいた?」
「そりゃあ次の対戦相手と聞ぃたさかい少し挨拶に伺おうと思いましぃ」
「対戦相手?お前となのか?」
「ワテもさっき聞ぃたばかりやけど」
マイカはその辺にあったパイプ椅子を広げて俺の隣に座ってきた。
「あんさん、ごっつ強いよね。試合見てたけど感心したわ」
「そりゃどうも」
「ヤンと戦ったってことは金塊の話聞ぃたんやろ? 」
少し和らいでいた警戒心が再び警報を鳴らした。
こいつもゴーストの協力者の可能性があるんだよな……
しかし、戦ったから聞いた?ヤンのやつ、もしかしてこの話を結構広めてるのか?
「ああ、興味ねえけどな」
「なんやて!?そりゃ勿体ない!あんた程の力があれば手にブチ込めるやろ!!」
マイカは椅子から転がり落ちそうなほど大袈裟なリアクションで驚く。
わざとらしい。何が目的だ。
「ベルトには興味あるが、団体の金をネコババしようとは思わねえよ。むしろお前らが異常だよ」
「それは正論やな。…せやけどあんさんの近くにも狙うてる奴はいるし、やっぱ金って欲しくなるものやないのかね」
「近く?」
「ロマリオ・メディチ」
「は?」
「やけん、金を狙うてる男の名前よ」
「あれ?もしかしぃ…あんな男を信頼しとるの?」
マイカの顔が俺の顔に近づく
「なんだよ、どういう事だよ」
「お人好しなマクレガーはんの事やから、あんな男を信頼しとるのかもしれへんが、アイツもワテと同じ穴のムジナやで」
「お前こそアイツの事をよく知ってるような言い回しだな」
「せやで、アイツもリストの1人やからな」
「なんだと?」
いやまさかとは思って少し驚いたが、アイツの酒癖や女癖の悪さから前科があっても仕方ない。
「アイツは詐欺の達人やからな。あんさんを上手く動かして最後にベルトを頂く気やで」
「信じられねえな」
「そうでっか。まあここで真実を告げるならアイツはワテの"奴隷"や」
「どういう事だ?」
「アイツはここに入る前からワテの部下なんや。ここに入団して強い新人と手を組むよぅに伝えたんや。あんさんに取り入ってるのもワテの指示だ」
「信じねえぞ」
「そう思うなら本人に聞いてみぃ。ま、しらばっくれるやろうがね」
「俺はメディチを信じる」
「じゃあワテも信じてくれたってや」
「意味が分からない。なにがいいたいんだ?」
イライラしてきた俺は酒缶を握り潰してしまった。
「おおっと………金塊の事や。持ち出すには1人じゃ無理やからな。だからゴーストはんも仲間を集めとるし、当然ワテの所にも声がかかってきた。でもワテはプロレス団体の運営なんて興味あらへんしね。政府の犬になる前に金だけ頂いてまた逃げようと思っとるんよ」
運営?
さりげなく俺が知らない情報も告げてきた。
もしかしてゴーストの目的はそう言う事なのか?
だとしたら政府の狙いはこの団体の支配か?
「ま、この船は泥船や。あんさんも闘いたくてもこんな所で戦うよりもっといいとこあるんちゃう?」
「俺は…」
「なあ、あんさんは何の為にここで闘っとるん?あんさんの実力ならもっとほかの有名な団体でも闘えるんとちゃうん?こんな船で燻ってる場合じゃないとちゃいます?」
俺は………
「ま、気が向いたらもっと話しようや。じゃ、来週の試合よろしゅう」
一方的にマイカは話を終え、去っていった。
俺は…確かになんでここで戦っているんだ…?亡き友の為?
その為だけにか?
俺は…俺は……