GGA〜ある日の風景〜
事の発端はGGAの道場であった。
毎日のトレーニングを行うレイ・テクニカがある事に気づいた。
チョップという攻撃の隙のなさに。
パンチ、キックよりもカウンターを受けるリスクが少ない。
これの破壊力を高めれば抜群の武器になるのでは?
ダンベルを降ろすテクニカ。
彼が1つのトレーニングを終えるとき、道場に緊張が走る…!
また訳の分からない特訓に付き合わされるのではないか?
他の選手の頭に不安が過ぎる。
ちなみに先日、油風呂を試そうとして社長に止められたばかりだ。
サンドバッグにチョップを打ち出し始めたテクニカ。
一時の安堵。
いや、トレーニングの時間はあと30分で終わる。
流石にあのテクニカが30分で切り上げると思えない。
これは問題なく今日のトレーニングを終えることが出来るだろう。
そう安心した束の間。
「なあ、カヴァレロ」
呼び出されたのはエル・カヴァレロ。
少しでも嫌がる素振りを見られたら面倒になるので咄嗟にテクニカの方へと歩き出すカヴァレロ。
「何だ?」
「牛の角って折った事あるか?」
「は?ねえけど?なんだよ急に」
「いや、牛の角を折れるくらいのチョップを考えたんだが……」
「折れるわけねえだろ!」
「まあそうだよなあ………実はチョップの破壊力を強くしたいと思ってだな」
「友よ!そんな事であれば皆で解決しよう!な!今から30分ミーティングだ!」
横から割って入ってきたのはフェルサ。
彼の天然的善意により強制ミーティングが始まってしまった。
勿論不満はあるが彼の誘いにNoとは言えない。そんな圧力…いや説得力がある。
「チョップの破壊力をどうしたらいいか」
「そもそもトレーニングを積む以外に選択肢あるのか?正直この集まりが無意味なのでは?」
結論を述べるアギラ。
正直に言って無駄な話し合いである。
「いやまあ、そうなんだけどよ。いまいち感覚が分からなくてだな…」
「確かに蹴りと違い、サンドバッグじゃ感覚がわかり辛いというのはあるな…」
「だろ?かといって毎度毎度スパーリングに付き合わせるのも申し訳ないなと思うしな…」
申し訳ないという気持ちがあった事に驚く一同。
「ビール瓶割りとか試そうとしたけどケガをしたら意味が無いと怒られたんだよな」
「まあ、パフォーマンス以外に意味は無いよな。…実践で色々試すしかねえんじゃねえのかな」
「このGGAにチョップの名手というものは存在しないからな!テクニカが極めてくれれば後の発展にも繋がるというものだ!!」
「実践……そうだよな!よし!頼んでみるぜ!」
「え?誰に?」
「社長にだよ!前回はせめてプレゼン資料を持ってこい!たわけめが!と怒られたからな!今回は資料を作るぜ!!燃えてきたーーー!!!」
矛先が我に向かわなければいいのだが、と思う一同。
テクニカは珍しく定時でトレーニングを切り上げ、自室に戻った。
後日…
GGA社長執務室。
「社長、レイ・テクニカ選手よりプレゼン資料が送り付けられました」
「む?少しは成長したようだな?発注書まで添えてあるのか。殊勝な奴だな………ふむ……おい、これをシュレッダーにかけてくれ」
「不採用ですか?」
「当たり前だ!水牛を用意してそれとのスパーリングだなんて許可できるか!!」
「は、はあ…」
「第一、倒した場合の処分等どうするつもりなのだ!煮込むコストがもったいない!」
※水牛の肉は硬い為煮込み料理が一般的な調理法
「左様ですね(倒せるとは思ってるんだ……)」
「誰かアイツに常識というものを教えれないのか……」
「父がああですからね。社長が教えられては?」
「馬鹿者!私はアイツの母親ではない!!……しかし、一般教養をカリキュラムとして選手へ指導するのはいい考えかもしれないな」
「ボツになっちまった。俺のプレゼン力不足だ…すまねえ」
「ドンマイ(誰も水牛と戦うなんて期待してねえよ!)」