GGA チャンピオンズロード "ビースト"
俺は無力だ。
先々週行われたツインズとマクレガー、メディチの試合を見て俺は満足感を得ていた。
荒削りだがコイツらは良いタッグだ。
どんどん先へ進んでいくアイツらを見て俺は無力感も味わっていた。
更にはここ最近負け続き、それも自分のファイトに悩んでいるからだ。だんだん俺の強みというのがよく分からなくなっていく
「先輩、悩んでるみたいですね」
そんな中、久しぶりに彼と話した。
グレゴリー・ドゥコフ。
ハンターの異名を持つ、二年後輩のレスラーだ。
彼はロシア出身レスリング系の選手としてキャラを確立しており、欧州仲間として親しくさせてもらっている
「メディチのパートナーとして名タッグを…と思っていたが、最近そう思えなくてな…」
「ふむ…」
「メディチが、というよりは俺の力不足を強く感じている」
「……じゃあ自分が、先輩が失った物を取り戻させてやりますよ」
「失った物?」
「野性、獣性です」
「どういう事だ」
「自分、先輩がこの船に来るまでの戦いを見たことがあるんですよ。今の先輩に足りないのはあの時見せていた野性です」
「野性…」
思えばあの頃は周りのほとんどが自分のようなエリートであった為、競争心や負けん気でぎらついていた。
今はエリートである事に胡座をかいている。
そういうキャラ…ペルソナだったのだが、本心までそれに侵食されている。
そんな心を彼は見抜いたのだ。
「獣になるんですよ…」
「今の俺に出来るんだろうか」
「まあ、次の俺達の試合を見ててください」
「デヴィッド・マクレガーとか…」
そう、グレゴリーの次の対戦相手はマクレガーだ。
正直、勝てる見込みは薄いだろう。
あいつと戦った俺には分かる。
「負けるかもしれない……でも、試練は乗り越えられる人にしか与えられないんです」
「グレゴリー…」
だが、俺は怖いんだ。
あのデスゲームを何度も勝ち抜いてしまった。
心を解き放つことで衝動をが目覚めてしまうかもしれない
だから、"エリート"になるしか無いんだ…